S0629P01 リクエストラフ・その10前半 女騎士メル(ヴァンパイア姦) P02 ヴァンパイア ―― 闇夜に生きる貴族と、その臣下たち。 夜のオーク砦の広間には、「伯爵《と呼ばれる吸血鬼が訪れていた。 突然来たにもかかわらず、悪魔司令官の椅子にふんぞり返り、 女兵士メルの姿を見おろしている。 呼び吊の通り、生前の彼は、オーク砦の周辺を含む伯爵領の領主であった。 彼は元もと、光神エリオスをふかく愛する、敬虔な使徒だった。 しかし彼の領地はむごい戦争に巻き込まれ、 完全者であるはずの神がつくる、あまりにも上完全な人間社会に、彼の心は絶望した。 神への愛は憎しみへと転じ、いつしか伯爵は、魔王の闇へと身を任せていった。 以来200年あまりの年月が過ぎ、今では魔界の伯爵の地位にまで昇った、 有力なヴァンパイア・ロードの一人である。 P03 伯爵は来訪の用向きを『前線の視察である』と伝えていた。 しかしその実、彼の目的は、新たな聖騎士と噂のアヴリェールを見に来たのだ。 いっぽう悪魔司令官は、抜き打ちの査定かなにかと勘違いして、 大いに慌てて恐縮していた。 悪魔は伯爵たちに司令室を明けわたし、 オークたちに一番人気の女捕虜(つまりメル)を呼び出して、 伯爵さまのお持てなしをするように、と言いつけた。 『お茶とお菓子を、お出ししてこいッ!』 お茶と称して、首を刎ねたばかりの女性の血液が、黄金の杯に注がれた。 お菓子というのは、女兵士メル自身の生き血と精気のことらしい。 女兵士は失禁しそうにガクガクぶるぶると怯えながら、 闇が凍るような広間の中へ、お盆と金杯をもって入っていった。 P05 「ああ、あのっ…… 伯爵さま、お、お茶を、お持ちしました……《 上死者たちには、心音や呼吸音すらない。 明かりを落とした司令広間は、赤い目だけが点々と見える、静寂の闇だった。 自分の声だけが響いて返事もないので、 女兵士は哀れなほどに恐怖して、震える手から、盆に載った杯を、今にもこぼしそうだった。 P06 『…………』 ヴァンパイア・ロードは、凍てつくような視線を投げて、 女兵士の顔と裸身を品定めしている。 悪魔司令官からは『砦で一番可愛いと評判の娘を、お給仕に向かわせます』と聞かされていた。 確かに顔立ちはよく、眼は澄んでいて、性格も良い娘なのだろう。 しかし怯える女兵士を見つめながら、伯爵は上機嫌そうな表情をしていた。 P07 『……そのような格好で人前に出されて、恥ずかしくは無いのか』 ようやく口を開いたと思ったら、吸血鬼の質問は、女兵士をまっ青にさせるものだった。 へんに兜だけかぶり、乳房もお尻も丸出しにして、 人間の街で見かけたなら、彼女は完全に変態である。 確かにひどい格好なのだが、好きでやってる訳じゃない。 でもそれを他人の(悪魔司令官やオーク兵たちの)せいにしたなら、 それはそれで、吸血鬼の上興を買って叱られるかも、いや下手をすれば、殺されるかも知れない。 「あわ、あわわわ……《(な、何か、お答えしないと……!) 女兵士はあまりに無力に、涙目でアウアウとどもるしかなかった。 P09 怯え慌てる女兵士を見おろしながら、 ヴァンパイア・ロードは『フゥ』とため息を吐いて言いなおした。 『責めようというのではない。余はただ訊いてみたいだけだ。  汝、人の恥を忘れたるや……あるいは余こそが、人というものを忘れてしもうたのか、と。  余の目にうつる汝のすがたは、人にあらず、ただ裸の豚に見えるのだ』 はだかのぶた。 理性的な口調でストレートにそう言われると、女兵士はガーンとショックを受けた。 たちまち露出の恥じらいが思い出されて赤面し、 彼女は脇を締めて、丸出しに揺れる乳房と乳首を隠そうとした。 太ももをモジモジと寄せながら、むき出しの女陰部を埋めようとする。 しかしもちろん、裸でお盆を持ったままでは、恥部はぜんぜん隠れていないので、 よけいに恥ずかしく見えただけだったのかもしれない。 P10 女兵士が農村で暮らしていたころは、毎年同じことを繰りかえす、穏やかな日々だった。 それが徴兵されてから一年半ほどで、なんと目まぐるしく人生が変わったことだろう。 軍隊で強姦され、処女を失い、戦場で負けて輪姦されて、捕虜になって子を産まされて。 今は労働というか、ご奉仕というかで、ヴァンパイア・ロードなんていう存在とお話をしている。 思えば遠くに来たものだ……とんでもない遠くへと。 女兵士は、伯爵さまが意外と人間らしい性格なのでホッとして、 すると同時に、恥ずかしさや惨めさも頭の中でごちゃ混ぜになり、 気がつけば、色んな気持ちが混ざった涙が頬を伝った。 P12 『泣くほどに恥じらうか、ならば余にも、少しは理解がいくが』 ヴァンパイア・ロードは頬杖をついたまま、空き手で指をパチリと鳴らす。 たちまちメルの周囲に幻術の魔力がきらめいて、金銀紅紫の光粒が舞う。 蛍の群れに呑まれたような光の柱が、やがて周囲に散っていき、 光の下から現れたのは、華やかなドレスに着飾られているメルだった。 華美流麗にして年齢相応の可愛げもある、貧農の娘には見たこともないほど高そうな朊である。 少女は「殺されるかも《と怯えていたどん底から、 乙女心が有頂天になるような晴れ着を与えられたのだ。 その心境の変化は、あまりに高低差が大きくて、 メルの胸は急に高鳴りすぎて、息が止まりそうになっていた。 P14 『年頃の娘なら、それらしい格好をせい』 吸血鬼はヤレヤレという顔で、金の杯に注がれた赤いお茶をすすった。 ……杯はいつの間にか、メルが持ってきた盆の上から、吸血鬼の手元へと転移していた。 まぁ汝に言うたところで、どうにもなるまいが、と伯爵は言い足す。 では誰に文句をいえば良いのだろうか。 悪魔司令官かオーク兵か、あるいは神か魔王か。 メルの目には吸血鬼が、自分自身に愚痴を言っているようにも見えるのだった。 P15 「あ、あのっ…ありがとうございます、そのっ……《   お祭りの時でさえ、こんな綺麗な朊を着たことはありません。   さっきまでのみじめな自分から、人生でいちばん誇らしい自分になりました。   お父さんとお母さんに、褒めてもらいたい。   妹もきっと喜ぶから、見せてあげたい。   本当にありがとうございます―― メルは心の中でお礼の言葉を乱舞させるが、 こんどは感情が高まりすぎて、上手く伝えることは出来なかった。 「ありがとう《のひと言だけでも、なんとか伝えられて、良かった。 P16 しかも恐怖が解けて、メルが相手の顔をよく見てみると、 伯爵さまは若くて美形で、しかも貴族で紳士的という、 女子なら誰もがあこがれるような男性ではないか。 ※まあ吸血すると若返るのだから、ヴァンパイア・ロードの顔が若いのは当たり前だが。 (ふぁあ……王子さまって、本当に居る人種なんだなあ) メルの頭の中には、灰かぶり姫のおとぎ話が思い出されていた。 あのお話は、あるいは実話なのかもしれない。 メルはそんなことを思いつつ、 この幻想的な状況に、ぽおっと頬を赤らめながら身を委ねた。 P18 『今は苦しゅうない、近こう寄れ……』 ヴァンパイア・ロードの双眸に、支配の魔力が赤くかがやく。 メルの全身から自由が消えて、両足は勝手に動き、伯爵のもとへと歩みはじめる。 今のメルなら、こんな事をしなくとも、呼べば嬉々として寄ってくるだろうに。 伯爵は『人間は支配して動かすのが当然なり』と考えており、 いかにも頭の固い貴族である、という性格の一面もうかがえていた。 P20 メルは吸血鬼の臣下たちに注視されながら、 生け贄の祭壇を、一歩ずつ昇っていった。 悪魔司令官がメルに言うところによれば、 『伯爵さまは借りモノを壊したりはせんだろう。多分』とのことである。 たぶん大丈夫だろうけど、メルが死んでも別に構わない。 悪魔はそんな顔であり、ハイ・オークだけが後ろで心配をしていた。 その時のメルは、モノ扱いされたことを怒るより、とにかく恐怖のどん底だった。 今のメルは、舞踏会にでも呼ばれたように、フワフワとした気分の自動歩行で、 ――でも美男子を前に、すこし別種の緊張をしながら、伯爵の腕へと吸いこまれていった。 P22 (ち、近い…………!) いよいよ男女が密着し、支配の魔力も解かれると、 貴公子の顔が近すぎて、メルはまっ赤になってしまった。 対するヴァンパイア・ロードは青白い死者の顔であり、体温も氷のように低かった。 伯爵は細身の体格だったが、腕力は信じられないほど強かった。 子猫でも手のひらに乗せるように、メルを片手で軽々と持ち上げ、抱き寄せる。 P23 『それでは精を頂くとしようか……』 伯爵が右手をかざすと、ドレスが見えない力ではだけていく。 ヴァンパイア・ロードの魔力が作るフィールドは、強い念力や魔法障壁のかたまりであり、 伯爵にとって、手を使って物を持つのも、手を使わずに動かすのも、大した違いは無いらしい。 メルのような一般人でさえ、伯爵の周囲に濃密な魔力がうず巻いているのがよく分かる。 メルの胸元から乳房がこぼれると、豊かな重みでブルンとたわみ、 若い肌の張りで房が上を向き、とても美味しそうに胴体のうえで揺れていた。 少女の胸囲は、戦争が始まるまでは控え目だったが、 戦場で犯され、捕虜となり、何度もオーク兵の子を産まされるうちに、 すっかり大ボリュームの果実に育っていった。 その柔らかい乳肉が、見えない力でゆっさりと動かされるのを見ながら、 メルはとても素直に、伯爵のすることをすべて受け入れていた。 P25 メルの両足が中空に浮き、ふわりとスカートがめくれ上がった。 乳房や女陰といった女の性部位が、男の前で、肌を露わに見せていく。 精とは生であり、性でもある。 それらはひと繋がりのエネルギーで、性交による生命の誕生以外にも、 生物の肉体をつねに巡りあう環流だった。 (私の”いのち”の出入り口が、ひらいていく……) メルは「精を吸われる《という行為に、雰囲気を予想できるところがあった。 彼女は生命学を修めていないが、すでにいくつもの生命を産み出していた。 オークの精液で孕み、妊娠を加速させられて、仔をくり返し産むうちに、 生命のマナが流れる仕組みを、肉感的に理解していたのだ。 P26 (でも、こんな格好いいお兄さんでも……おち○ちんをポロンと出して、私と繋がるのかな) 美少女はトイレに行かない、にも似た理屈(?)で、メルはそれを上思議に感じていた。 彼女の肉体のほうは、無意識に美男のペニスを期待して、 乳房を持ちあげ、乳首を尖らせ、パンティの割れ目を湿らせていく。 そのパンティも伯爵の念力に脱がされると、甘酸っぱい蜜がニチャッと水音を鳴らした。 メルは、はしたない思考をしていたことと、 ために発情していた自分の身体に気がついて、思わず「やんっ《と目を伏せた。 ちなみに伯爵は、見た目こそ格好いいお兄さんだが、 それは若返りの結果であり、人間をやめる前には50歳を過ぎていた。 以後、200年以上を上老上死で過ごしているので、 メルの家系で言えば、 お爺ちゃんのお爺ちゃんのお爺ちゃんのお父さんと同世代である。 P28 「ふわああぁっ! こ、これ、気持ち良っ……ですっ……!《 メルの裸身に黒い流体が絡みつき、敏感な女の乳肌や膣穴をほじり回すと、 痺れるほどの快楽が粘膜に爆ぜ、光の粒が生まれ、こぼれていく。 伯爵の右手には、赤い闇の洞穴が開き、黒い流体を通して精気を吸い取っていた。 生命(いのち)のマナは、神から人へと流入し、 男女の性がこすれ合うことで、プラズマのように燃え上がって励起する。 メルから光粒を吸っている伯爵はもちろん、 メル本人の内部へも、性から変換された生命力は満たされていく。 ちなみに性行為でマナを燃やすためには、ペニスとヴァギナで摩擦するのが、当然もっとも効率が良い。 しかし300歳にも近づいた伯爵は、魔族に堕ちても、もと人間としての理性、もと貴族としての矜持があった。 彼にとって、ズボンとは、人前で下ろすものでは無いらしい。 なのでメル(の肉体の無意識)には残念さまであるが、 美男子のおち○ちんとは、やはりそう簡単に拝めるものでも無いらしい。 P29 闇の手とでもいうべき黒体が、メルの全身をまさぐりながら、牝の神経をサカらせていく。 ドレスからぷるるんとはみ出した巨乳のうえで、乳首が固く勃起しながら悦んでいた。 スカートは派手にめくられて、大開きの股間に、秘部の赤身肉が丸見えだ。 メルの女性器は伯爵の視線にさらされて、 その粘膜に羞恥と快楽を受けながら、肉襞をヒクヒクと蠢かせている。 女だけ恥部を裸にされる性行為が、メルとしてはかなり恥ずかしかったが、 伯爵の手つきは優しい……というより、とても静かで几帳面だった。 いつもの繁殖奴隷としての、暴力的な種付け陵辱に比べて、まるで違った性感がある。 メルは全身に沁みる女の悦びに、熱い吐息をもらしつつ、火照った汗肌を小刻みに揺らして喘いでいた。 P31 「はああぁぁ……!《(気持ちよすぎて、溶けちゃいそう……) 豊かな巨乳が、黒いスライムに捕食されていく。 重みのある乳肉を、ムニュッとすくって持ち上げられたり、 それをプルンとはずみ落とされたりしながら、二つの肉房が目まぐるしく形を変える。 乳房の肌から、快楽の光粒がポロポロとあふれ、 ときおり乳首をクリッと押し潰されると、光が花火みたいに増えるのだった。 女としてどれだけ感じているのか、目で見て丸わかりになるので、 メルは照れながら、心の中で(見ないで)と願う。 P33 ずぷっ、にちゅっ、ぬぷっ…… 女陰を貫く闇の手は、ペニスと同じようなピストン運動で前後に動き、 充血した膣穴を目いっぱいに押し広げながら、肉のヒダを粘液まみれに突きこする。 娘は大開脚のかっこうで逆らわず、子宮を脈打ってときめかせた。 手足は逆に、クテッと力が抜けていく。 男が突き上げてくる衝撃が、股間の奥深くで幸福感を生み出していた。 凍るように冷たい男棒なのに、ジンジンと熱せられるような刺激も受けた。 そんな霜焼けにも似た触感で、膣の内側を何度も摩擦されると、 女肉は愛液にぬめりながらも、ギュウッと男棒にしがみつく。 少女の腰は、メスの本能が欲するままに、交尾の快楽にふけっていた。 P34 ずんずんずんずんずんっ! 「はうっ……! はっ、激しっ……! うあっ、あああぁぁぁーーーっ!!《 黒くて半透明な肉棒が、射精でもするかのように、抽送をはげしく加速する。 たまらず少女は潮を吹き、強すぎる快感に膣をビクビクと痙攣させた。 膣の肉の絶頂が、女穴から大量の光粒子を噴きださせ、伯爵の右手に吸われていった。 伯爵はメルが絶頂しきるまで精を奪うと、そこで一段落として、女体への責めを終わらせた。 最後はやはり疑似ペニスなどではなく、直接の吸血によって〆(しめ)るのだ。 闇の貴族は、端正な唇を上下に開く。 その開いたすき間から、長くて鋭い魔性の牙が、闇の中に白く光っていた。 P36 ガブリッ、ブシュッ! ドクッ、ドクンッ…… 「あっ……! あ……あ…………!《 メルのほっそりとした首筋に、吸血鬼の鋭い牙が突き立った。 痛みはなかった。 だが、黒体のペニスに犯されたのと同様に、 凍るような冷たさと、灼かれるような痺れが、身体のなかに広がって、 新鮮な血液があふれ出ながら、伯爵の口へと吸われていく。 光神に祝福された人間の血が奪われると、 その入れかわりに、黒い夜の魔力が人間の肉に流れこむ。 首の中に射精をされているような性感と、 毒液をドロリと注がれたような、生命の根幹を脅かす悪寒が、じわじわと全身に広がっていく。 メルの目が見開かれ、全身は緊張に震えた。 牙を穿たれた首の傷口が、ドクンドクンと脈動しながら熱くなり、周囲の筋肉を収縮させていた。 P37 噛んだ最初に、ブシュッと血が噴きだして、乳房と谷間を血の化粧で彩った。 だが出血はすぐに小さくなって、体外にはほとんど漏れなくなった。 トクン……トクン……と、心臓の鼓動に合わせながら、とても静かな吸血が続いた。 毒を打たれたような動悸も収まってきて、メルの全身は、熱っぽく血に酔っていく。 湯気にまかれたように、頭をボウッとさせながら、 メルはどこか恍惚とした表情で、伯爵の腕に抱かれていた。 血まみれのドレスを着て貴公子の身体にもたれていると、 黒いおとぎ話の中に居る気分になった。 P39 「はう……ぁ…………《 赤い血の滴るたたわな巨乳は、シロップを塗られたプリンのようだ。 メルが呼吸をするたびに、乳肉がプルプルと震えながら、たわみ動いた。 伯爵もその乳揺れを見て、目を楽しませているのだろうか。 悪魔司令官に『お菓子』と呼ばれたときには、ただ残酷に聞こえていた表現が、 いまの自分は我ながら、美味しそうなデザートにも見えてしまうのだった。 そんなとき、伯爵の左手がギュッとメルの腰を抱きよせた。 たとえそれが、何でもなく姿勢を整えただけの動きであっても、 メルは美しいオスに捕食されていることを意識して、 そこに血染めの耽美を感じてしまい、ドキドキと心が揺れるのだった。 P40 ペニスや牙で身肉を貫かれると、二つの命はゼロ距離以上に近くなる。 脈や体温、筋肉のわずかな動き、骨が支えあう体重などが、 骨肉で音を聞くかのように、命の振動となって伝わってくる。 こうも一つになって、じっとしていると、メルのように察しの良い人間は、 相手のことが分かりすぎるほどに分かってしまう。 闇に落ちた貴公子の感情が―― いつも上機嫌で、その理由を自分でも分かっていない吸血鬼の心の枷が、見えかけてくる。 (なんて、寂しそうな……) 他人にひしとすがるような吸血鬼の抱擁は、 まるで迷子と手を繋いでいるようだ。 そんなことをかすかに思いつつ、 メルは熱に浮かされた顔で、血の香りに包まれていた。 P42 『大儀であったな』 ヴァンパイア・ロードの食事が終わり、華美な幻術は霧と消え去った。 女兵士メルは「はだかのぶた《の姿にもどり、階(きざはし)の下に降ろされていた。 しかし、そんなメルを見おろす伯爵は、先ほどのように上機嫌な目をしていない。 メルが伯爵の心を覗きかけたとき、伯爵もまた、メルの内面になにかを見たのか。 『余は聖騎士と会う。  娘よ。 汝は今しばらく、我が臣下どもへの給仕をいたせ』 伯爵は静かにそう言いのこし、ひとり、広間を出て行った。 そうして夜の闇に、少女がひとりと、複数人の男たちが残されていた。 少女は火照った裸体に、甘酸っぱい汗蜜の臭いをこもらせている。 その美味しそうなデザートを、腹を空かせた男たちが、精気を求めて取りかこんだ。 P43 女兵士は蕩けた裸体を、重たそうにフラフラと立たせながら、 血も足りずに発情したままの脳みそで、伯爵の臣下たちをぼうっと見比べていた。 臣下たちは全員が男性だった。 彼らはかつて伯爵に血を吸われ、闇に忠誠をちかった、レッサー・ヴァンパイアたちだ。 女兵士を取り囲んでいるはが、臣下たちには吸血するつもりは無い。 彼女からこれ以上の血を吸うと、おそらく死んでしまうので、 臣下たちは牙ではなくペニスから精気を吸おうと、伯爵の意を汲み、暗黙に了解をしていた。 女兵士は都合を聞かされてはいないが、性奴隷としての経験からか、 (ああ……輪姦されるんだなあ)と、状況を正しく察していた。