ブロック崩し企画そのB  >>スキップ

そして、夜。

ガニラス討伐の達成を祝って、
漁村の人々は、ささやかな戦勝会を、
私のために催してくれた。



「いやぁ、見事な一撃じゃったな!
 どうして最初っから、
 ハンマーを使わなかったんじゃい?」

「は、はぁ……
 やっぱ人目があるときは剣のほうが
 ……じゃ、なくて、
 ハンマーは筋力が要るじゃないですか。
 一応、女の身ですんで……」

「何をご謙遜しとるんじゃい!
 おまいさんの怪力やったら、
 両手ハンマーで2本もっても行けますがな!
 わははははっ!」

「そ、そうですかねーっ!?
 あっ、あっ、あははははーっ!」
(ゴリラかよ、私はっ!?)

杯をあおる上機嫌な村長さんに、
引きつった笑顔でお追従する私。

さすがに船を買えはしないが、
報酬の額は、なかなかのものだった。

「すみませーん、どいてくださーい」
「大きな皿が入りますよー」

一座がうれしくどよめく中を、
豪快なメインディッシュが運び込まれてくる。

「おお、ようやくかい!
 ささ、戦士どのっ!
 遠慮なくハシを付けていただきたい!」

「わーい♪ いっただっきまー…………
 …………
 …………って、あ、あの……こ、これ……?」



目が点になる、とはこの事か。
馬鹿でかい皿の上で湯気を昇らせているのは、
いわゆる『ご禁制』とされる大王イカの子供、の様だが……

大王子イカ(?)は、極上の海産珍味である。

しかし食すれば、海だろうと陸だろうと親イカのリベンジに遭うため、
『食いたければ軍備せよ』とさえ言われる爆弾料理のはずだ。

「大王イカを揚げた日に、はからずして軍備までそろう!
 これもお天道さまのお導きじゃーい!」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!?」

軍備というのは、もしかして、もしかしなくとも
どうやら私のことらしい。

(ガニラス一匹退治するのに結構手こずってたんだけど!
 村長さんも見てたじゃないっ!?
 腕を買ってくれるのはうれしいけど、
 怒った大王イカと単騎で立ち合うだなんて、
 それこそ本当にハンマー片手で一本ずつ
 二刀流とかゴリラみたいな戦士じゃ無いと……)



どかーん! めきめきぃ!

心の中の愚痴でさえ、
最後まで言わせてもらえない。

轟音ひびき、屋根と瓦が吹っ飛んでいく。
これって私のせいじゃないのに、
なぜだか事態の中心に据えられているような気がして
涙はハラハラと頬を伝っていた。

だいおういか(お父さん)があらわれた!
「l;kd;ぁkjかj;lだ!」(よくも娘を!)

「だいおういか(お母さん)があらわれた!
「ぽpじゅだおふっ!」(ゆるしませんっ!)

目の前が真っ暗になる私と対照的に
少し離れた物陰から、
やたら明るい声援が聞こえてくる。

「さあっ! ガンガン行くんじゃー!
 戦士のハンマー再びっ!!」

「む、む、無茶言うなーっ!!
 てか何さっさと避難してんのよーっ!?」

思わず突っ込むために、振り向いた私のみぞおちに、
大王イカのたくましい触手が突っ込んできた。



だいおういか(お父さん)のこうげき!
せんしに 35ポイントのダメージ!

「ぐっ……ふぁ……」

イカのボディーブローをまともにくらい、
エビみたいな格好で吹っ飛ばされていく。

壁にぶち当たって跳ね返り、
地面に転がったところに第二撃。

だいおういか(お母さん)のこうげき!
せんしに 31ポイントのダメージ!

「だ……だから、無理だってのに……」

(嗚呼、でもあたしがダウンしちゃったら、
 村長さんとか、どうなっちゃうんだろう……)

考えても仕方ないことを考えながら、
私の意識は、あっさりと薄らいでいくのであった。

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